Title: CRESTプロジェクト「情報があふれる社会から表現が編みあがる社会へ」

科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業CREST「デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術」領域(領域統括: 原島 博 東京大学名誉教授) 「情報デザインによる市民芸術創出プラットフォームの構築」研究プロジェクト(代表: 須永 剛司 多摩美術大学教授)が2011年に最終年度を迎えました。

以下は、中間報告のシンポジウムの際に私が書いた報告です。

 「情報があふれかえる社会」から「表現が編み上がる社会」への変化をお手伝いしたいと考えこのCRESTの研究プロジェクトを開始した。「社会」が変化する時には、ほとんどの場合、その変化の原因がほんの少数の要素だけに特定されるということはないであろう。多くの場合は、数多くの原因となる要素が相互に複雑に関係して結果的に社会が変化するのであろうと思われる。我々は、「情報があふれかえる社会」から「表現が編み上がる社会」への変化の兆しがすでにいろいろなところに現れていると考えていた。我々のプロジェクトのめざすところは、その変化がさらに人々にとって気持ちよく促進されることである。
 文科系と理科系のグループが共同して試みているこのプロジェクトの全体像を無理にシステム論的に説明するとするならば、我々がなしていることは、「表現が編み上がる社会」を構成するいくつかの要素を意図的に制御することにより、要素間の関係性を変化させ、結果的に全体のプロセスを変化させることである。可制御でない要素 − たとえば人々の表現欲求という要素など − は、可制御の要素 − たとえば合評の方法 − を制御することにより、間接的に変化させることをめざすことになる。多くの要素を少しずつ変化させることにより、最終的にめざすのは、社会の中で空間的にも時間的にも自律的に持続する「表現が編み上がる」プロセスである。
 正直に言えば、可制御な要素としてどのような要素が存在するのかもわからないところから、この研究プロジェクトは開始された。したがって、まずは「表現が編み上がる」プロセスを数多くの実践を通して経験することから始めるしかなかった。今回のシンポジウムで報告したのはそれらの実践の中の主なものだけである。
 それらの実践を通して徐々に明らかになってきた「表現が編み上がる社会」の構成要素を並べ上げてみると次のようなことになろう。ただし、これは時間をかけて分析していくべきものであり、現段階では未整理のままの知見である。

(A)直接には制御することが難しいと思われる要素
 1.人々の表現したいという欲求
 2.表現の場(たとえばワークショップ)に参加してみようという動機
 3.表現の喜び

 我々のめざす「表現が編み上がる社会」においては、1→2→3→1→2→3→・・・というようにこれらが循環することになるはずである。

(B)制御することが可能であると思われる要素
 1.表現の場(たとえばワークショップ)の存在を知らしめる方法
 2.ワークショップのコーディネータの立ち位置
 3.ワークショップの空間的、時間的プログラム
 4.表現したいものを表現物に変換するためのプロセス
 5.表現物を見せる方法

 今回のシンポジウムでご報告したのは、(B)の1から5をさまざまに変化させてみた時に(A)の1から3がどのように変化するかという実践の場での実験である。
 水越グループにおいては、(B)の1から3をさまざまに変化させた。その全体像の分析と総合は未だ不十分であるが、次の堀グループの試みとそれらを合体させることにより、(A)の1から3の要素と全体像が大きく変化することを確認した。
 堀グループにおいては、(B)の5として、各個人の表現物だけでなく、表現と表現の間の可能な関係性を半自動的に判別して表現間のつながりも見せるような情報システムを提供した。すると、人々は、各表現物とは異なる関係性としての表現をそこに見いだし、その関係性に基づき新たな表現を生みたくなる(Aの1)のであった。
 須永グループにおいては、(B)の1から3に留意しつつ、4と5の要素の制御を試みた。(B)の4と5の両方に関わることになるが、「図と地」の関係がきわだつような「おもしろ画用紙(ズージー)」を考案し、西村グループの情報技術でそれを情報システムとして実現し、こどもたちの表現プロセスを変化させてみた。当初は図と地の関係を想定していたが、実際にやってみると、こどもたちは表現と表現の関係性を自ら作り出していくことに熱中するようになった。これは、結果的には、堀グループと西村グループで別々の(B)の5を提供したところ同じような(A)の3の変化の効果が得られた、ということになりそうである。ただし、その詳細な分析はまだこれからの課題である。
 以上を要するに我々は「表現が編み上がる社会」をめざして、いくつかの要素を変化させる実践を行ってきた。その結果、たしかに表現が編み上がるプロセスが変化するという手応えを得るようになった。しかし、当然のことながら、関係すべき要素はまだまだ数多く残っている。我々がそれらの要素をすべて並べ上げ、それらの要素間の関係をすべて明らかにするということは不可能であるが、少なくとも我々が実践的に把握した要素間の関係を、今後他の要素と関係づける作業を行い、また、それらの関係が全体のプロセスにどのような影響を及ぼしうるのかの分析を行っていく必要があると考えている。さらには、状況や文脈に応じた支援方法の総合的なデザインの方法論も構築していく必要がある。それは、プロジェクト終了後も含めた息の長い研究となるであろう。

     堀 浩一 (東京大学)



Author: Koichi Hori


 

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