Title: 人工知能学会創立25周年にあたって


人工知能学会誌 Vol. 26, No. 6, p. 570
(2011年11月)

人工知能学会創立25周年にあたって

      堀 浩一 (東京大学)

 私の学生時代(1970年代後半から1980年代前半)、人工知能学会はまだ存在していませんでした。 学生が人工知能の研究をやりたいと申し出ると、多くの場合、指導教官から「そういう怪しげな研究をやることは許し難い。」と言われるような時代でした。 人工知能に夢を抱いていた若者たちは、たとえ指導教官に許してもらえなくてもどうしても人工知能の研究をしたくて、自主的に勉強会を開催していました。 関東にはAIUEO(Artificial Intelligence Ultra Eccentric Organization)があり、関西には対話研がありました。 研究発表を行う公式の場は、電子通信学会や情報処理学会の関連の研究会しかありませんでした。 当時は、学生が海外出張することは制度的にほぼ不可能で、IJCAIが1979年に、またCOLINGが1980年に日本で開催された時は、喜び勇んで聴講に行きました。 世界のトップレベルもたいしたことはない、これなら我々も世界の第一線で勝負できる、というのが怖いもの知らずの我々学生たちが抱いた印象だったと思います。 しかし、実際に自分たちの論文がトップレベルの国際会議にアクセプトされるようになるまでには時間を要し、悔しい思いをすることになります。 大学院を修了して数年経った頃に、人工知能学会が創立されました。 自分のホームとなる学会ができた喜びというのは、現在の若い会員の皆さんにはなかなか理解できないことかもしれません。 当時はまだ、人工知能の研究者というのは、洋の東西を問わず、自然科学系の古い学会からは異端児扱いされていた時代でした。 最先端の研究を理解できない頑迷な老人がいる古い学会を離れてひたすら楽しく研究の発表と議論をできる公式の場が初めてできたのでした。

 時は経ち、私は2008年から2010年まで第12代の人工知能学会会長を仰せつかることになりました。 人工知能学会が確固とした存在になった今でも、かつて異端児扱いされた研究者たちの精神は受け継がれていると思います。 わくわくとして楽しくなければ人工知能研究ではありません。 人工知能研究者は、他の領域では思いつくことのできないような新しいアイディアを創出しつづけなければなりません。 それと同時にまた、社会を支える基盤技術としての人工知能の普及にもつとめなければなりません。 最先端の領域を切開くことと基盤技術を普及させることとは相矛盾しないと思います。 我々はわくわくと楽しみながらそれらを同時に行うことができるはずです。

 人工知能学会も創立25周年を迎え、領域が確立されたことに伴う弊害も散見されるようになってきたように思われます。 その代表的な例は、「人工知能を作ること」を目標とせず、「論文を作ること」を目標にしているのではないかと思ってしまうような仕事がたまに見かけられるようになってきたことでしょう。 論文は目標とする生産物ではなく、あくまでも仕事の副産物に過ぎません。 副産物の生産の競争のための場としての存在に学会が成り下がってしまうことは避けなければなりません。 英語のcompeteの語源はラテン語の「コム ペテレ」であり、その意味は「seek together」である、と私はかつて恩師の猪瀬教授に教わりました。 我々は決まったゴールにむかって早く到達しようと競っているのではありません。 どこにあるのかわからない未知の領域を、君はあちらへ、僕はこちらへ、と分担しながらともに探し求めているのです。 学会は、切磋琢磨しながら共同でその作業を行うための場でなければなりません。

 私が会長だった時に、戦略委員会という時限の委員会を設置し、今後の人工知能学会のあるべき姿について議論していただきました。 さまざまな議論が行われましたが、その中で、重要な課題としてとりあげられたのが、人工知能研究に関わる仕事の評価の多元化でした。 これは、上に述べた「論文のための論文」のようなものが増えてきたことに対する危機感から議論されたものです。 人工知能を作る仕事は伝統的な自然科学系の学会と同じ評価体系で評価すべきではありません。 どのような評価体系がありうるかについて、真剣な議論が繰り返されました。 その結果、すでに会員の皆様がご存知のとおり、論文誌の原著論文のカテゴリーとして新たにコンセプト論文と実践AIシステム論文というカテゴリーが追加され、また、現場イノベーション賞という新しい表彰制度が設けられました。 それらの新制度も活用しながら、皆さん、ひきつづき、一緒に、わくわくとして楽しい 人工知能研究を盛り上げていきましょう。



Author: Koichi Hori


堀浩一の紹介

堀浩一の紹介:
(これは著者が手で作成した空間です)
(上の空間の中でクリックしていただけますと、各項目にアクセスできます。)
(「堀 浩一」という項目から始めて、関連する話題を、ざっとではありますが、抽象的な問題は右へ、具体的な問題は左へ、一般的な話題は上へ、人工知能研究関連の話題は下へ、という方針で、配置してみました。ただし、すべての項目の配置がその方針を満たしているわけではありません。)

堀浩一の略歴と連絡先は「堀 浩一」にあります。 詳細な履歴は「堀 浩一 詳細履歴」にあります。
たまに「堀 浩一 の ひとりごと」を更新しています。なぜかこのひとりごとへのアクセスが比較的多いのですが、読んで下さっている皆様に感謝申し上げます。
堀は人工知能の研究者です。時々堀洋一先生と間違われることがありますが、 「堀洋一さんと堀浩一は別人です」
堀研究室は東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻にあります。 研究室では、航空宇宙工学への人工知能の応用だけでなく、学生諸君の自主的なテーマ設定を尊重して、幅広くいろいろなテーマの研究を行っています(「堀研究室所属を希望する皆さんへ」「活躍する教え子たち」)。

私自身は、人工知能研究の中でもやや特殊な「創造活動支援システムの研究」を行ってきました。 なんだか怪しい響きの研究テーマだと思われるかもしれませんが、いつのまにか仲間も増えました(「ことばと発想のテクノロジー 」)。
創造活動支援システムの一例として「堀の自作ソフトKNC(Knowledge Nebula Crystallizer)」を作りつづけています。このサイトもそのKNCで動いています。「KNC(Knowledge Nebula Crystallizer)の原理 」にやや専門的な説明を書きました。このサイトを動かしているKNCは「Rails + MySQL」で実装しています。

研究者が何をめざして研究をおこなっているのかの本音について、「事業仕分けをきっかけに思う」に書きました。研究者の本音を身も蓋もない言い方で言ってしまうならば、面白くて仕方ないので研究しているということになるでしょう。
しかし、学問ごとに目標とするところに少しずつ違いはあって、 我々工学の研究者がめざしているのは、おおげさな言い方をするならば、人類の幸福です(「工学と理学の違い」)。
理想と現実の狭間で、研究をどうやって評価すべきかは、重要で難しい問題です(「評価」から「解説」へ 」「人工知能学会創立25周年にあたって 」)。
できれば、産学連携も、理想に向かって「志高き産学連携」を行いたいものです。

最近再び人工知能の研究が注目されるようになってきています。 そもそも知識とは何なのだろうという問題については、昔々現代思想誌にも書かせていただいたことがあります(「知識の姿 − 人工知能研究者の立場から」)。
「機械が心を持つようになるか?」 「人工知能倫理(AI Ethics)について」 「機械との競争について」 「集合知とは何か」等々、私も考え続けています。
学会の果たすべき役割についても考え直す必要がありそうです(「人工知能学会創立25周年にあたって 」)。
それらすべてに関係する「人工知能とは」という解説記事を書きましたので、それも掲載しておきます。


最終的に私がめざしているのは、恩師からの宿題の「文化国家としての技術立国 」に少しでも貢献することです。


automatically generated story 13.9.28.12

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これは自動的に生成された空間です。
「起承転結」の関係になるような項目をシステムが自動的にさがして上から下に並べました。
上の空間の中でクリックすると各項目にアクセスできます。


 

現在の御興味の推定位置と御興味の移動予測

(これは、トピック間のキーワードの共有度とユーザの行動履歴をもとに自動的に作成した空間です。)

御興味移動先予測地点に近い項目から遠い項目まで一覧(距離):


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現在位置 x = 0.3, y = 0.94
現在誤差 sigma = 0.0
予測位置 x = 0.3, y = 0.94
予測誤差 sigma = 0.07


(別の方法で計算した)現在の文脈で関連しそうな項目(関連度):
relevant in the current context (relevance score):


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